電通マン36人に教わった36通りの「鬼」気くばり
日本を代表する広告代理店・電通のイメージ暴落が著しい。新入社員の自殺が過労死に認定されたことで明るみに出た長時間労働、残業過少申告、隠れブラック企業体質。4代目社長・故吉田秀雄氏が定めたという電通の社是「鬼十則」には「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……」なんてのもあった。これでは過労死もするわ。 『電通マン36人に教わった36通りの「鬼」気くばり』の著者は『気まぐれコンセプト』などで知られるホイチョイ・プロダクションズ。『戦略おべっか』を改題した、営業マンの心得集だ。 〈「競合プレゼン」で、博報堂の方がいいアイディアを持って来ても、キャンペーンの扱いは、たいていの場合、電通の方に行ってしまっていた〉。接待、付け届け、裏取引などの「寝業」は電通が勝っていたからだ。ならばその業を学んで出世し、格差社会を勝ち抜こう、というのがコンセプト。 お詫びやお礼をメールで済ますな。前の晩にごちそうになった上司にはサクランボの佐藤錦を持って相手に直接お礼に行け。 仕事はスピードが第一だ。〈電通には「今やれ、すぐやれ、ここでやれ」という金言がある〉。出来より速さを優先させよ。 宴会は得意先にヤル気と結束力を見せつける絶好の機会。だから電通ではどこの営業部でも揃いのハッピを作る。〈スーツ姿でやる芸と、ハッピを着てやる芸では、ヤル気が違うし(略)チームワークのアピールにもなる〉 著者が著者だけに話半分のところもあるとはいえ、あまりに昭和な体質に感心したり呆れたり。 〈ビジネスで最も重要な概念は、「貸し借り」である。決定権のある人間に対し「貸し」を貯めておけば、ここぞという時に預金を引き出し、無理なお願いを通すことができる〉。それが基本のキ。 36の教えをすべて実践したら心身が疲労し、格差社会を勝ち抜く前に自分が潰れそう。社員を追い詰めるのは精神的苦痛。長時間労働だけが問題ではないと知るための、事例集として有効かも。
週刊朝日
11/24