校内の芝生でのランチ
校内の芝生でのランチ

豪州東部のゴールドコーストから西に100キロ離れたトゥーンバにある、私立小学校。1911年設立の伝統ある「トゥーンバ・プレップ・スクール」(以下プレップ校)に、日本から9人の小学生が「学期(ターム)留学」した。現地の児童と同じクラスに出て、校内にある寮で寝食をともにする。

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 ここ数年、親子留学や海外でのキャンプなど、小学生向けの海外プログラムが増えている。しかし、私立立命館小学校(京都市)が今年初めて行った、提携する姉妹校への「2カ月のターム留学」は、全国に例がない。新たな試みの狙いを、浮田恭子校長はこう話す。

「高学年の子には、真の国際人となるための『自立心』を養ってほしい」

 7月16日、プレップ校に到着した児童たちは、サンドラ・ホーキン校長先生や寮の世話係、そして現地の子どもたちに笑顔で迎えられた。

「ゴミ箱ってなんていうの?」
「貴重品をどこに預けますかって、どう聞けばいいのかな?」

 慣れない「生活用語」へのとまどい。怒濤のスピードで耳を通り過ぎるオーストラリア英語。

 初日の授業を終えた夕食のテーブルで、涙にくれる日本人の子がいた。「バディ」と呼ばれる、現地の世話役の児童が、黙って肩に手を置いて慰めていた。ホームシックで泣いたのではない。5年生の髙瀨雅さんは、後で記者にこう打ち明けた。

「自分の英語が通じなかったのが、悔しかったんです」

 朝6時に起き、夜8時に就寝する寮生活のスケジュールは分刻みだ。3食の時間は決まっていて、シャワーは夕方に3~4分。宿題や寮のミーティングの時間もあり、まさに「朝から晩まで英語漬け」だ。

「分数の計算は日本より1年ぐらい遅れてるけど、Division(=割り算)というような英単語はなじみがないので、宿題をするにも時間がかかるんです」(6年生の鈴木萌子さん)

 留学にかかる費用は衣食住を含む寮費や、日本語でも相談できる現地スタッフの2人のカウンセラー代、渡航費などを含めて約60万円。親元を2カ月離れる思いきったプログラムにもかかわらず、「親御さんたちの関心は高かった」と浮田さん。対象は5、6年生で、今年春の事前説明会には、240人の児童中、100人を超す父母が参加した。その中から、帰国後の授業に追いつける学力があり、留学を強く希望する男女9人が選ばれた。

「通訳やカウンセラーなど児童を守る環境は整えていますが、10歳にもなれば子ども扱いしなくても自分の判断で行動できると信じていました」(浮田さん)

AERA 2012年11月5日号