●『GALAC(ぎゃらく)』最新号のご案内AmazonでGALAC7月号を買う
<br />
●『GALAC(ぎゃらく)』最新号のご案内
AmazonでGALAC7月号を買う

●「破獄」光る山田孝之

 ドキュメンタリーは、米国の原発メーカーの技師として福島に赴任した沖縄出身の男性の半生を追ったETV特集「境界の家」(NHK Eテレ)が高く評価された。「原発の不具合など中にいる人の証言に重みがある」「原発問題と基地問題の渦中にいる人物の姿を丁寧に追った」などといった声が相次いだ。

 ミュージカルを切り口にトランプ大統領時代の米国社会を描いたBS1スペシャル「ハミルトン」にも注目が集まった。「ハミルトン」は、カリブ海移民ながら米国建国の父となったアレクサンダー・ハミルトンの生涯を描いたブロードウェイ作品。多様性を肯定する作品内容に対して大統領支持者と反対者の間で論争が沸き起こっているといい、そこを掘り下げた番組は、「政治問題が大っぴらに語れる米国の風土が伝わってくる」とされた。

 以上2作品が月間賞となったが、ほかに冤罪事件で再審無罪となった者たちが支え合う姿を追ったETV特集「獄友たちの日々」、報道特集「戦前回帰?教育を考える」(TBSテレビ)、ザ・フォーカス「震災から6年事故後初!原発沖の海に潜る」(同)なども推薦された。

 ドラマでは、伝説の脱獄囚を描いた吉村昭の同名原作を池端俊策がドラマ化した「破獄」(テレビ東京)に多くの票が集まり、すんなり月間賞となった。「宣伝通りの出来栄えで映像にも深みがあった」「看守たちとの心理戦をうまく描き、彼らをコントロールするかのような主人公を山田孝之が見事に演じきった」との声が挙がる一方、「主人公が捕まる場面をもう少し詳しく描くなど2夜連続でもよかった」というぜいたくな要望も出された。

 Perfume主演、木皿泉脚本の「パンセ」(テレビ東京)も注目され、「スノードームを見せられたようなキラキラした世界観。設定がうまい」などと好意的な意見が出たが、月間賞には今一歩及ばなかった。ほかに、今春スタートの日曜劇場「小さな巨人」(TBSテレビ)、連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)に今後への期待が込められた。

 バラエティは、「笑×演」(テレビ朝日)、「いつかボクらもご意見番 コメンテーター予備校」(日本テレビ)が候補として挙げられた。「コメンテーター」は「大喜利的な面白さ」が買われた。ただ、最終的には、今春レギュラー化された「笑×演」が月間賞に。芸人が書いたネタを役者が演じるという発想が新しいネタ番組。強面俳優の小沢仁志・和義兄弟が漫才に挑戦した回の完成度の高さが決め手となった。今後の特番制作を求める声もあった。(旗本浩二)

※『GALAC(ぎゃらく) 7月号』より