OurPlanet―TVは、2013年に復興庁の官僚が暴言ツイートしたことをスクープしましたが、本人への直撃インタビューを撮ったので、各テレビ局が映像を貸してほしいと交渉に来ました。各局のワイドショーやニュース番組の担当者と、映像提供のことでやりとりするなかで見えてきたのは、現場の余裕のなさです。現場責任者が外部スタッフに対してきちんと指示や確認をして、局内の情報共有がしっかりしている局がある一方、まともな対応がなされない局もあることに驚きました。その局内は情報のやりとりもずさんで、スタッフの言葉遣いも荒く、人にお願いする態度が取れないわけです。こちらが普通のことを言っても、すぐに逆ギレ。一人だけではなく、複数のスタッフがそんな態度です。人はギリギリのところで仕事をしていると冷静な判断ができなくなる、とにかくテンパって興奮しちゃうのだなというのを目の当たりにしました。

──現場が殺気立っていると。

 これはとても深刻な気がしますね。チームワークが完全に崩れている環境で働いているスタッフは、責任も交渉権限も持っておらず、ただ「借りてこい」と言われているだけ。小間使いのように扱われているわけです。こちらが「他の番組にもこういう条件で出しているんです」と説明しても、「それでは上司に報告できない」と、理解しようとしない。非正規の末端にいる人たちだから、本当に可哀相だなと。

 現場でそういうことをしてしまうというのは、何らかのプレッシャーが背景にあるんです。局のプロデューサーやディレクター、作家などが現場に無理難題を強いるなかで、そのしわ寄せが行くのが、非正規の人たちです。

●横並びの競争を止めて制作に喜びを見出せる世界に

──数字が取れない、制作費が削られる、現場が疲弊する、そのしわ寄せが非正規の人たちに行く……この負のスパイラルを断ち切るには、どうすればいいと思いますか。

 長時間労働はテレビの場合、視聴率のためという名目で、無駄な動きが多すぎることに起因している面があると思います。でも、今やテレビ離れで、昔のような視聴率はとれません。もはや競うレベルが変わってきて、情報番組やバラエティでも「5%取ったらおめでとう」くらいになっていることを考えると、もうそんな競争からは足を洗って、もう少し大胆なことをしてもいいんじゃないかと思います。

 横一列で競争してどうにもならなくなっているのなら、数字の呪縛から少し自由になって、思い切って新しいことをやってみてはどうかと。視聴率とは違う目標設定をして、制作することに喜びを見出せる世界にしていかないと、それこそ地獄が繰り返されるだけです。

──働き方と同時に、作り方を変えてみてはどうかと。

 月いくらの定額で働きっぱなしという非正規の人も多いわけですから、テレビの働き方改革は、超難関のエリートである正社員より、まず非正規から手を付けるべきです。

※『GALAC(ぎゃらく) 6月号』より