●制作費縮減で制作会社が派遣会社化

──制作費の削減など、制作会社が制作を引き受ける条件も悪くなっているのでしょう。

 まるごと1つの番組をプロダクションが請負って制作するスタイルは、地上波ではだいぶ減りました。例えば「情熱大陸」のような番組に企画を出して1本撮るというパターンは大幅に減っているように見えます。昔はニュース枠でも、リポートなど、プロダクションが7~10分のミニドキュメンタリーや海外リポートを300万円で請け負うという仕事がありましたが、そういう形態もほとんどなくなりました。

 その結果、今はほぼすべての制作会社が派遣会社の形態を取って局に人を送り込んでいます。番組を請け負って制作して納品するより、人を派遣するほうが儲かるからです。

 一方、働く側からすれば、キャリア形成がすごく難しい。私たちの若い頃はプロダクションでも「正社員」で入れた。今は入社時から「契約社員」という形がほとんどです。かつては局への派遣も会社ごとに番組で専門性を発揮する形でしたが、今は複数の制作会社から、さまざまな雇用形態のスタッフが入り乱れています。結果として非正規の人はますます使い捨てになっています。

──労働者派遣法が改正されて、雇い止め3年の上限が放送の現場にもかかるようになり、偽装請負も増えたのでしょうか。

 偽装請負の人も多いと思います。契約方法が多岐にわたるようになり、それぞれ条件もバラバラ。エージェントが入らない「人買い」みたいになっている。一般ビジネスの世界で派遣会社から人が派遣される場合と違って、テレビ業界の場合は派遣会社という特殊な存在ではなく、プロダクションが人を出す。出しているうちに局の人間と親しくなったら、派遣じゃなくてそのまま請負になったり、番組が変わったら別会社の契約になるとか、そういう流動的なことが起こっている。特にワイドショーのような番組は相当に流動的です。さらにネットテレビが出てきて、より安い給料で働くことになるから、電通の高橋まつりさんのケースのようにどちらかというと精神的な拘束性の強い長時間よりも、むしろ肉体的に、物理的に拘束されていると思います。特に女性に多いのは、不規則な生活を強いられてすごく太っちゃうケースが多いんですね。

●映像提供で直面した非正規スタッフの「人間性の崩壊」

──放送業界は長年長時間労働を「是」としてきた面があり、根は深いですね。

 放送局の働き方はもっとゆったりできないものかなと思います。過酷な働き方は、その人の人間性を壊してしまうこともあるからです。

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