寄せ鍋の魅力は言うまでもなく、さまざまな食材を楽しめるお得感。味わいの変化がうれしいものだが、寄せ鍋型ドラマはそういう意識で見ないほうがいい。たとえば当作で考えると、最大の食材は間違いなく菜々緒そのものだった。シリアルキラーとしての佇まいと、相反するような美ぼうは、寄せ鍋のカニに該当するメイン食材であり、まずは存分に堪能したい。次に他の魚や野菜にあたるサスペンスやアクションをそれなりに味わい、またカニの菜々緒に戻る。もし好きではない食材があれば、無理して食べる必要はない。何をメインや二番手の食材に選び、何を食べないかは個人の好みでいいだろう。ネットの普及で「欲しいものを欲しいときに得る」オンデマンド志向が一般化したが、ドラマも「何を見るか」という作品選びだけでなく、「作品の中でどのテーマを選ぶか」という目線が必要な時代に来ているのかもしれない。

 ただ、制作陣に要望しておきたいのは、「寄せ鍋を作るのなら、できるだけ鮮度や希少性の高い食材を選んでほしい」ということ。視聴者が「メインとして選びたくなる魅力的な食材をどうそろえるか」が成功の鍵を握っている。

●きむら・たかし その他の寄せ鍋型は、「無痛」「オトナ女子」とフジテレビが目立つ。一方、「フグならフグ」と食材(テーマ)を絞った鍋で勝負しているのが「下町ロケット」「コウノドリ」のTBS。各局の戦略がうかがえる。