「機捜刑事VS完全悪女の、クライム・ラブサスペンス!」。当作のコピーを見たとき、ふと不安がよぎった。何だか寄せ鍋のように、キーワードがてんこ盛りだからだ。案の定、サスペンス、アクション、恋愛、セクシー、終盤にはホラー要素が生まれるなど、テーマが混在。これらの“食材”からさまざまなダシが出て奥深い味になればいいのだが……食べてみたらコピーの印象と異なるさっぱりとした薄味だった。多くのテーマを描く分、必然的に「なぜ殺すのか?」などの人物描写は減り、メインであるはずのサスペンスはなかなか突き抜けていかない。ハラハラドキドキは高まらず、それなりにお腹を満たすことはできるが、「本当においしかった」という満足感までは得られなかった。

 このような“寄せ鍋型ドラマ”が生まれるのは、制作側の思惑によるところが大きい。「どれかのテーマに引っかかってくれれば」とリスクヘッジしたい気持ちは明らかだし、ハイテンポな展開とシンプルな図式を好む視聴者が増えるなか、「ワンテーマで押し切るのは難しい」という事情もわかる。しかし、寄せ鍋型ドラマは、『GALAC』読者のようなテレビ好きの舌に合わず、「物足りない」という声が挙がるのがお約束。それが理由で「見ない」と決めつけがちなのだが、薄味の寄せ鍋型ドラマにしかない良さもあり、ぜひ味わってほしいと思う。

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