知的財産権を懇切丁寧に解説することで定評のある著者が、発明×青春ミステリー小説を上梓した。カバーには綺麗なイラストが使用され、読み進めてみると男女の学生も登場し、いかにも小説らしく物語は進む。

 ところがストーリーが進むにつれ、「商標登録」や「サブライセンス」など知的財産権に関連する用語が登場する。それらが話のキーワードにもなっており、用語を理解することでサスペンスはより一層、深みが出てくる。もちろん注釈があるので、それらを押さえれば特許全般に関する理解が深まる全く新しい構成となっている。

 さらには巻末にまとめられた知的財産権入門コラム集も秀逸で、これだけでも知財における全体概要をつかむことができる。エンターテインメントを堪能しながら知財を学べる入門教材として、非常にオススメの一冊だ。
(新井文月)

週刊朝日  2020年10月23日号