すべてのものはインターネットにつながらない──本書はそう断言してみせる。「AI」「IoT」「GAFAの支配」といった、最近しきりと喧伝される目新しい用語は、空虚なお題目にすぎない。

 情報化がどれだけ進もうとも、企業の競争力の源となる固有の知見は、現場での気の遠くなるようなアナログな試行錯誤の連続という固有の努力を通じてしか生み出されず、他社あるいは他国の企業がそれを形ばかり模倣しても、同じ結果にはならない。「深層の競争力」は、個々の企業が置かれた環境や歴史的経緯に沿ってこそ最適化されたものだからだ。

 日本の会社の9割以上を占める中小企業を例に取ってそのことを検証している本書を読めば、グローバル化が進む中、日本のものづくりの真の強みがどこにあるのかがおのずと見えてくる。(平山瑞穂)

週刊朝日  2020年7月10日号