三十路の童貞・恵太は、叔母の頼みでダイエット教室のアルバイトを始める。仕事は、途中で教室を退会した元会員たちを再入会させること。かつての職場の同僚で45歳、体重80キロの小百合とコンビを組み、痩せたいと願う女性たちと向き合っていく。

 読み進めるうちに、タイトルの「ダイエット」とは体ではなく、心を対象にしたものだとわかる。なぜ女性たちは痩せたいと願っているのか。それは心からの望みというよりも、夫や好意をよせる異性、また世間体など外部からの圧力によるものだった。ふたりは個性的なアプローチで女性たちの本心を解き放ち、「心のダイエット」を成功させていく。

 文体はポップで小気味好く、笑いが詰まっているが、「自分らしさ」を貫くことの難しさと意義についても、大いに考えさせられる。(若林良)

週刊朝日  2020年2月14日号