1月24日、千葉県野田市で小学4年生の女の子が死亡し、虐待の疑いで両親が逮捕された。虐待のリスクを承知で父親のもとに子どもを帰したとして、この事件では児童相談所にも批判が集まった。この種の痛ましい死亡事件はしかも、今度がはじめてではない。

 大久保真紀『ルポ 児童相談所』は、児童虐待を長く取材してきた朝日新聞記者のレポートだ。

 通告を受け、夫婦げんかの現場に、子どもがひとりで放置されたアパートに、異臭のするゴミだらけの部屋に踏み込んで、子どもを救出する「一時保護」。これは最終手段に近い方法だが、応じない親も多く、怒鳴られたり、ときには包丁を持ち出されたりする。

 一時保護に向かう際には、ハイヒールははかず、すぐ連絡できるよう携帯はポケットに入れ、カバンは軽くする。いずれも児童福祉司(ワーカー)が機敏に動くための方法だ。一時保護とはそれほど緊張を強いられる仕事なのだ。

 しかし、本当に大変なのは一時保護の後である。児童相談所には一時保護所が併設されているが、衣食住が確保されて安全な半面、不自由な場所だ。中高生でも携帯は使用できず、外部と連絡はとれない。親の強制的な引きとりを防ぐため学校にも通えない。

 読み進むほど明らかになるのは、悲惨な環境に置かれた親と子がどれほど多いか、と同時に児童相談所のスタッフがどれほど過酷な労働を強いられているかである。

 2003年~16年に虐待で死亡した子どもは無理心中を除いて678人。ここ数年では6割がゼロ歳児で、一方、16年度に児童相談所が対応した虐待相談は12万件を超えた。ワーカーひとりの担当事案は70件、ときに100件超。<いまは迷うぐらいなら保護です>としつつ<かつてより、子どもたちの環境は厳しくなってきている>とある児童相談所の課長はいう。<いまは親がすごく孤独><自分自身のことで精いっぱいになっているところがあるのかなと感じます>。近隣に児童相談所ができたら地価が下がるなどといってる場合じゃないのである。

週刊朝日  2019年3月22日号