そういえば、もなかって自分で買ったことがほとんどない。上あごに皮がくっつくし、あんこの味しかしないし。と思っていたのだが、この本を手にして、認識を改めました。オガワカオリ『全国もなかぼん』。おそらくは本邦初のもなかだけ!の図鑑である。

 ほぼ原寸大、オールカラーで紹介されたもなかは、北海道から九州までじつに250種類。丸や四角のもなかは皆無。動植物はもちろん、工業製品から建築物まで、出るわ出るわ奇体なもなか。

 北海道には羊、牛、えぞ鹿、などのもなかが当然あり、鮭の形の「知床斜里あきあじ最中」は全長22センチの特大サイズ。海産物は大漁で、「氷見ブリ最中」(富山県氷見市)、「子もちたこ最中」(兵庫県明石市)、「烏賊もなか」(佐賀県唐津市呼子町)、「関あじ最中」に「関さば最中」(大分市佐賀関)などなど、さながら魚市場のごとし。貝だけとっても、ほたて、かき、ばか貝、あさり、たいらぎ、さざえ、あげまき、はまぐり……すべてありますからね。

 こうしてみると、もなかは、たい焼きや人形焼きにも勝る造形美の世界。それも地場産業や地元特産物への愛の産物なのだ。

 よって愛知県豊田市に行けばセンチュリーやクラウンなど、トヨタ車型のもなかが何種類も存在するし、三重県鈴鹿市にはサーキットにちなんだ「ライダーもなか」が登場する。城下町の天守閣型もなかや、門前町の観音像や仏像を模したもなかは、もはや定番。

 味だっていろいろだ。わさびを模した静岡県の「山そだち」にはわさびペーストが、京都府長岡京市の「竹の子最中」にはたけのこが、あんに練り込まれている。

<なんでコレをもなかにしようと思ったの!?という逸品が多い>と著者。私が笑ったのは、乾麺の束の形の「そうめん最中」(揖保乃糸のお膝元の兵庫県たつの市)と、名古屋市の「あんトースト最中」かな。なんでまたソレをもなかに……。町のお菓子屋さんの傑作ぞろいのお菓子な本。ゆるキャラにも飽きてきたし、全国もなかグランプリをやればいいのに。

週刊朝日  2019年2月1日号