ロッキード、ソ連崩壊、オウム、地下鉄サリン、北朝鮮問題……。昭和から平成の世に起こった大事件の裏には、何があったのか。かつて、田中角栄邸の警備担当だった警察官・砂田が、己の信じる正義を胸に、警察組織に蔓延る闇に立ち向かっていく作品。

 バブル景気の熱に浮かれていた時代の残骸は、日本の政治、経済を浸食していった。「クリーンな警察組織をつくりたい」。一度は同じ未来を夢見た同僚が、出世欲にまみれ、自己の利益を優先する生き方へと変わっていく姿に、砂田は愕然とする。人間の果てしない欲望、個人では抗えない権力、組織の腐敗を砂田の視点で描く様は、ドキュメンタリー作品を読んでいるかのようだ。

 全編を通して漂う緊張感にじっとりと汗ばみ、スピード感溢れる展開に惹き込まれる。

週刊朝日  2018年11月23日号