いまや「もりかけ」と略される森友&加計問題。欲目ではなく、これは朝日新聞の取材に負うところが大きい。朝日新聞取材班『権力の「背信」』の副題は「『森友・加計学園問題』スクープの現場」。取材記録をもとに2018年5月までの両問題の経緯を追った迫真のドキュメンタリーである。

 森友問題の発端は16年秋、大阪本社豊中支局にかかってきた市民からの電話だった。<豊中市野田町の国有地が、ある学校法人に売却されたらしい>。法人名は森友学園。電話を受けた記者が現地に赴くと、建設工事の真っ最中。いくらで購入したのか、近畿財務局のHPでは非公表。担当部署に問い合わせても「公表できない」。大阪本社社会部のデスクに相談。12月に情報公開請求をした契約書が開示されたのは翌17年1月。黒塗りだらけで何の文書かもわからない。<「なんやこれ」とあきれて苦笑するほかなかった>。もう一方の当事者・籠池理事長にアポなし取材を試みると、1億3400万円だというではないか。社会面に第一報が載ったのは2月9日だった。<国有地の売却額 非公表><価格、近隣地の1割か>

 加計問題の発端は17年早々、東京本社社会部で教育問題を担当する記者が取材先で耳にした話だった。<獣医学部の新設問題で、首相官邸、政治家、大学側の関係がおかしいんですよ>。同じ17年2月、国家戦略特区の取材をしていた東京本社特別報道部の記者も<今治市の特区案件に問題がある>という情報を得ていた。社会部と特報部が連携して取材を進める中、決定的な文書が手に入る。記事は5月17日の最終版に載った。<新学部「総理の意向」>。<「あしたから騒ぎになるのでしょうね」/「ああ、間違いないですね」>

 スクープはちょっとした疑問を執拗に追うことからはじまるのだね。この後も続々出てくる新事実。にもかかわらず、安倍政権がいまだに倒れていないのが不思議。むろん取材はいまも続行中だけど、この内容なら「安倍内閣、崩壊への軌跡」という副題でもおかしくないのよね、本当は。

週刊朝日  2018年7月13日号