紫式部は『源氏物語』を「実用書」として作った。そう主張する本書は、紫式部がいかに自己啓発の手法や教育論、教訓を詰め込んで『源氏物語』をヒットさせたかを述べる。

 古典を題材としたエッセイを手がける著者は、「紫式部は宮中の権力者に真っ先に『源氏物語』を贈り、彼らに評判を語らせること」でPRにつとめたなどの裏話のほか、「セクハラ満載の社会で女が生き延びる」ためには「何がなくても自己肯定」「つまらぬことばも喋り方しだい」などと説く。「男も女も欲望のためには嘘をつく」「どんなダメ人間でも生きる価値がある」「あなたを人間扱いしない者とはつき合うな」などの教訓も導き出す。

 紫式部は稀代の作家でありながら、こんなにもビジネス感覚を持っていたのかと驚かされる。

週刊朝日  2018年5月4-11日号