キーマンの肉声を根こそぎ聞き出し、綿密に紡いでいくストーリー展開は、著者の真骨頂である。

 主人公は東芝の第15代社長西田厚聰氏。米原発メーカー、ウェスチングハウス(WH)の買収を決断して約6400億円を投じ、強気な経営スタイルを見せつけた西田氏は、グループ企業を売却して原発と半導体メモリーを強化。彼の代名詞ともいえる大胆な「選択と集中」は成功を収めたかに見えた。

 だが、WHの経営破綻とともに東芝は債務超過に陥り、半導体メモリー事業の売却に追い込まれる……。

 イランの現地法人で採用され、昭和の臭いがする成り上がり人生を体現した西田氏。絶頂へと導いた名門を彼は、どのように〝奈落の底〟へと突き落としたのか。その真実が詰まった一冊である。

週刊朝日  2018年2月2日号