モリ・カケとか改憲とかいろいろ問題は多いけれども、経済政策はうまくいっているから。選挙で自民党に投票した人の多くは、そんな気分なのだろう。しかし、景気が回復しているという実感はない。

 アベノミクスはほんとうに成功しているのか? 役所が発表しているデータをもとに検証したのが明石順平『アベノミクスによろしく』である。著者は1984年生まれの弁護士で、主に労働事件や消費者被害事件を担当している。

 読んでびっくり! 書いた本人も、データを調べてびっくりしたというのだから当然か。結論から言うと、アベノミクスはほとんど成果をあげていないのである。

「大胆な金融政策」など「3本の矢」によって、デフレを終わらせ、経済を成長させるというのがアベノミクスだった。ところがいくら日銀が異次元緩和を続けても、経済は成長せず、消費も伸びない。

 たしかに大企業の業績は伸び、株価は上がった。だがそれは円安によるもので企業の力ではない。株主や自社株を持つ会社経営者は株の配当で潤っているかもしれないが、一般社員の給料は増えず、人手不足で疲労困憊している。

 雇用状況の改善はアベノミクス以前からの傾向で、倒産件数の減少、自殺の減少もアベノミクス以前から。つまり、ほんとうにアベノミクスの「成果」といえるのは、円安ぐらいしかない。

 年末に閣議決定した来年度予算案を見て暗い気分になる。歳入の3分の1以上は新たな借金である新規国債。厚労省が公表した人口動態統計によると出生数は2年連続で100万人割れ。借金は増え続け、人口は減り続ける。

週刊朝日  2018年1月19日号