「鶴瓶」の知られざる逸話が次々紹介される。彼の口述本を企画したものの固辞されたため、膨大な過去記事や発言を総ざらいして仕上げた。こうした「まとめ本」は既読感ゆえに途中で飽きてくるものだが、どんどん引き込まれる。

 冒頭から「鶴瓶とは“スケベ”である」と切り込んでいる。主演映画のロケ中、一家に1枚以上のサインを書いたばかりか、風呂まで借りた。数々の武勇伝の背景にあるのは、眼前の相手を喜ばせたいという欲だと指摘。それを「スケベ」と捉え、逸話や証言を線から面へつなげている。

 司馬遼太郎の歴史小説を読む快感に通じる、というと誇大に聞こえるかもしれない。が、著者がNHK「家族に乾杯」の収録に同行しながらも直接の聞き取りを加えていないのが、本書の面白さを支えている。

週刊朝日  2017年10月13日号