新潮社の元文芸編集者で、木版画家でもある山高登。二つの人生を歩んだ氏が、その半生を語った書だ。

 戦時中に山本有三に出会った山高氏は昭和22年、彼が創刊した児童雑誌の編集者として新潮社に入社。吉屋信子、谷内六郎、内田百聞など、戦後を代表する作家たちの担当を務めた。在籍中、同僚から装丁の相談を受けたことをきっかけに、版画家としても活動を開始。当時は担当した本の装丁を自身で手がけていたという。その名は次第に認知されるようになってゆき、社外からの依頼が増加。昭和53年、同社を退職し専業版画作家となった。

 編集者時代は、「昔ながらの美しい本をずっと作りたいと思っていた」という山高氏。本の随所に挿入された写真や版画作品からは、言葉に違わない氏の一貫した創作姿勢が伝わる。

週刊朝日  2017年9月1日号