大竹まことがパーソナリティーを務めるラジオ番組内の一コーナーの書籍化だ。放送時間は約5分。男手一つで育ててくれた父の背中を見て、ピンセット工場を継いだ鈴木正弘さん。交通事故による寝たきり生活を経て、車椅子ラグビー日本代表となった岸光太郎さん。最終試験で宇宙飛行士を逃したが、別の形で夢をかなえた内山崇さん。原発事故からの避難者、沖縄戦の体験者ら16人を収録。圧縮した文章からは取材に費やした時間と労力が想像される。

 10歳のとき母親から卵焼きを持たされて以降、ハンセン病施設で暮らす磯野常二さん。「薬食いだから」とケガした指を切り落とされ、まだ微かに見える左の眼球も摘出された人生を語る85歳の言葉は穏やかだ。

 大竹が朗読中に言葉を詰まらせる「付録」のCDは必聴だ。

週刊朝日  2017年8月11日号