放送開始から今年で50年を迎えたテレビ番組「ウルトラQ」。そこで描かれた「戦後日本」の社会を、文化評論を専門とする著者が解読する。
 著者は各回のエピソードに注目し、その作品に刻まれた時代の特色や文明論的な課題を浮き彫りにしていく。例えば、人間をミクロ化する挿話に、当時の人口増加の問題を見いだしたり、地球人と同化する宇宙人の姿に、米軍によって日本から切り離された「沖縄」を見いだしたり。また東京を破壊して成長する巨大植物に、日本の社会基盤が崩れることへの、不安の顕在化を読み取っていく。
 終章で扱われる「2020年の挑戦」(第19話)には、同年の日本が直面するであろう課題が予言されているという。日本を救うのはウルトラマンではなく、「Q」でも奮闘した日本人一人ひとりなのだ。

週刊朝日 2016年10月14日号