書評『こころ動かす経済学』日本経済新聞社編 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

こころ動かす経済学 日本経済新聞社編

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内山菜生子書評#話題の新刊

 数式を駆使した高度な経済学が、実生活からかけ離れたものと思われるのは、その独特の人間観によるところが大きい。人間は自分の利益を最大化させるために行動するとされ、心の機微は捨象されてきたからだ。これらの既成観念を打ち破ろうとするのが本書だ。
 日本経済新聞朝刊の「経済教室面」に連載されたシリーズをまとめたもので、13人の研究者が「こころ」という切り口で、競争、倫理観・価値観、男女の行動の違い、差別と偏見、希望の役割、幸福などを取り上げている。たとえばワークライフバランス。所得税率が上がると、労働者は所得を増やすメリットが減り、残業を少なくして家族と過ごす時間を伸ばそうとする。こうして税率によって人々や政府の価値観が変わる。逆もありうるというのだ。
 おもてなし、やる気、メンタルヘルス……。
心の問題とみられたものを新たな視点で解明していく学問の威力に驚かされる。本書は、経済学が社会全体の富を増やし、適切に分配し、誰もが幸福になるための学問であることがわかる一冊だ。

週刊朝日 2016年2月19日号


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