書評『すぐそばにある「貧困」』大西連著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

すぐそばにある「貧困」 大西連著

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松岡瑛理書評#話題の新刊

 27歳の若さでNPO法人「もやい」の理事長となった著者が、自ら関わる支援活動の経験をもとに国内の貧困状況をまとめた一冊だ。
 著者が出会った人々の目線に沿って、その生活実態が描かれる。ホームレスや高齢者、元暴力団員など、対象はさまざまだ。若者も登場する。例えば、22歳のとある男性。高校卒業後、飲食店や派遣業を転々とし、その後無職となった。暴力気質の父親に勘当され上京するが、生活保護申請の扶養照会がきっかけで実家に戻され、父の暴力が再発する。あるいは、著者の携帯に深夜何度も連絡を入れる32歳の女性。弟の暴力により家を飛び出し結婚するが、夫の束縛を受けて離婚。実家に帰るも、世帯人数が原因で生活保護の基準からはねられてしまう。一筋縄ではいかない事情を抱えた相談者らの姿は、失業や生活保護につきまといがちな「甘え」「怠惰」といったイメージを有無を言わさず吹き飛ばす迫力を持つ。奨学金、非正規雇用など身近に潜む「貧困」への扉は尽きない。その入り口となるボタンが、読後はよりはっきり見えるようになる。

週刊朝日 2015年11月20日号


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