漢方医療の重鎮・丁宗鐵氏を先生に、イラストレーターの南伸坊氏が生徒となって漢方をめぐるあれこれを聞く愉快な講義。「漢方ってナニ?」から日本の医療制度、「鑑真和上はブータン人だ」説まで縦横に語っている。
 時代劇ではよくヤブ医者に描かれるせいか、漢方は世間でちょっと疑いのマナコで見られているふしがある。だが、実は現代医学よりよほど効果のある治療も多く、いま認知症に最もよく使われるのも漢方薬だという。
 驚くのは、漢方薬では同じ薬が正反対の症状、たとえば下痢と便秘の両方に効いたりすること。西洋医学とはまったくちがう薬の考え方、未病、虚証、中庸といった漢方の概念は非常に理に適っていて、人の体は西洋医学一辺倒ではとらえきれないものだとわかってくる。
 丁先生の話はアメリカ独立と高麗人参の関係や、カレーライスの起源にも及ぶ。とんでもないところから医療や健康の話に突入して、私たちの常識を軽やかに吹き飛ばしていく。
 一方、シンボー君はええっ!?と驚いたり感心したりしながら絶妙の質問を繰り出す。二人の掛け合いがまことに楽しい。

週刊朝日 2015年3月13日号