書評『ルポ 医療犯罪』出河雅彦著 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

《新書の小径 (週刊朝日)》

ルポ 医療犯罪 出河雅彦著

このエントリーをはてなブックマークに追加
青木るえか書評#新書の小径

医療事故を連続で起こす医者!

 いやもうひどい話である。
 医療の現場で起こった事故、というよりも犯罪物件の詳しいレポだ。最初に出てくる事例が、生活保護患者を食い物にした悪徳医者による事件だ。する必要のない手術を、手術する腕のない医者にむりやりされて、そのまま死んでしまったおっちゃん。おっちゃんに手術代を払う能力はないが、生活保護を受けているから国から金を引き出せる、という仕組み。この医者は実刑判決を受けているから、ほんの少しは溜飲が下がる。
 それにしても、この医者を実刑に追い込むまでのたいへんさたるや。病院の中で、医者が、専門用語で何か言ったら、シロートはうかつに口を出せない、出しても聞いちゃもらえない、警察も役所も「泥棒を捕まえる」ようには動いてくれない、この難しさ。医療犯罪にだけは巻き込まれたくない、と思うばかりだ。
 しかし、この悪徳医者の医療犯罪よりも、この後に出てくる事例のほうがもっとこわいのだ。リピーター医師という存在!
 これは「悪い医者のしでかす犯罪」というものとは違う。「3年間に4回の事故」を起こしてた医師をはじめとする、(たぶん)悪気はないが能力の問題などで患者を無用な死や後遺症に陥れる医者だ! これはコワイ! 悪気がないだけに本当にコワイ!
 闇から闇に事故が葬り去られるのも恐ろしいが、医療事故として公になり、訴訟なんかも起こっているような、そんな事故を連続で起こす医者。しかし、医師免許を取り上げられるでもなく、医者として引き続き診療や治療をし、知らなかったらその医者にかかってしまうというこの恐怖。こういう医者相手の、訴訟の困難さ、めんどくささも詳しく書かれる。
 ならば事前に調べていい医者に、となっても、がん治療方法一つとってもあっちがいいこれはダメいやそれが正しい、と上下左右から言われて立ちすくむばかり。健康を維持して病院に行かないようにしよう、と思わされる。

週刊朝日 2014年11月7日号


トップにもどる 書評記事一覧


おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事
あわせて読みたい あわせて読みたい