帯の惹句が強烈だ。
<言ってしまえば、バラエティー番組はすべて「やらせ」である!!>
 朝の人気情報番組「とくダネ!」のレポーターとして覚えている方もおいでだろう。著者はフジテレビの元アナウンサー。長谷川豊『テレビの裏側がとにかく分かる「メディアリテラシー」の教科書』は、テレビの現場で14年、その後フリーになった著者がテレビの裏側を告白し、読者に覚醒を促す辛めの警鐘本である。メディアリテラシーとは情報を批判的に見極める能力のこと。近年、相当広がってきた概念ではあるけれど、具体的な例をここまで提示した本はさすがに少ないかも。
 07年、納豆のダイエット効果に関するデータの捏造が発覚した「発掘!あるある大事典2」。関西テレビは謝罪し、番組は打ち切りになったが、<あの謝罪放送自体が、世間の怒りをガス抜きするためのやらせだ!>。「あるある」の現場ではもともと「やらせ」的な過剰報道が日常的に行われていたのに。
 05年、日本中を震撼させた「耐震強度偽装事件」。報道は過熱し、設計した一級建築士を<徹底的に叩け!>という指示で現場は動き、彼の妻を自殺にまで追い込んだが、6年後、<1000年に1度の地震が来ても彼らの物件やマンションはビクともしなかった>。あそこまで袋叩きにした以上、地震後の検証もなされるべきだったのに。
 こうした事例を次々あげつつ、でも著者はいうのだ。だからといってマスコミは信用できんと怒るのはまちがっている。民放のお客は視聴者じゃないんだもん。民放の正体は株式会社。お金を出すのはスポンサーだもん。<テレビ画面に映っているのは「情報」ではない。情報の姿を借りた「商品」>なのだと。
 やっぱテレビの人だなあ、と思わせる煽りの利いた筆致である。<マスコミがおかしい? 甘えるな!>といわれてムッとした人は必読。フジテレビが政府寄りの報道を続ける理由もわかります。

週刊朝日 2014年7月4日号