福島第一原発で、4号機の使用済み核燃料を燃料貯蔵プールから取り出す作業が今月中にもスタートするという。燃料の数は4号機だけで1533本(1~4号機全体で約3100本)。大丈夫なんですかね。
 そこで、この本。ハッピー著『福島第一原発収束作業日記』。2011年3月20日から2年余にわたるツイートをまとめた貴重な現場報告集だ。事故直後の衝撃もさることながら、著者が再三訴えるのは政府や東電の対応がいかに現場を混乱させ、作業を滞らせるかってことである。
 たとえば東電がつくった机上の空論的「工程表」に対する疑問。〈東電も、政府の戦略に加担した工程を早く現実的な工程に見直して欲しいよ〉〈このままの工程じゃ、無理して必ず弊害が出てくるよ〉(11年5月9日)。11年12月16日、当時の野田首相が出した「収束宣言」が現場に与えた影響も予想を超えている。
 まず賃金の問題。〈原発事故の「緊急作業」は名目上終了した事になり、作業員単価や危険手当の金額が大幅に下がってしまったんだ〉。次に契約や書類の問題。すべての作業に事故前と同様の契約書や仕様書が必要になり〈作業が後手後手になっていったんだよね〉。そして東電のコストカット。収束宣言以降、競争入札が増え、原発での経験や実績がなくてもギリギリのコストで処理を請け負う会社が増えた。その結果は〈工事の品質も含めて、後からいろんな部分に悪影響として出てくるんだ〉。
〈トラブルの多くは、十分予測出来た事なんだ〉と著者はいう。〈予算削減、設計簡素化、工期短縮、行き当たりばったりの対応・対策のツケが、今になって露呈してきてる感じなんだよね〉〈今のままじゃ40年後の廃炉とか、絶対に不可能だよ〉。
 この人を原子力規制庁のスタッフに加えなさいよ、といいたくなるような鋭くもゾッとする指摘の数々。ツイッターは現在も継続中。鎌田慧『自動車絶望工場』(73年)や堀江邦夫『原発ジプシー』(79年)の系譜に連なる第一級の証言だ。

週刊朝日 2013年11月22日号