高齢者向けセックス特集をする週刊誌の売れ行きが好調なように、人はいくつになっても性への興味は尽きないらしい。本書は東京スポーツの連載「いろ艶筆」を一冊にまとめたものだ。「女と男の性」や「カラダの神秘」について、極めて真面目に向き合っている。ダジャレ好きで知られる著者らしく、中でもエッセイの随所にちりばめられたダジャレからは、並々ならぬこだわりが感じられる。
 伊勢佐木町で異彩を放つ「あ×ひげ薬局」に通い、怪しげな精力剤や潤滑ゼリーに興味を示したかと思えば、人妻と一緒に「潮吹き」を研究すべくDVD鑑賞。フランス文学者である著者らしく、フランスの作家ラブレーが根拠なく主張する、エメラルドには男性器を元気にする効力があるといった話も飛び出す。
 単行本化が決まり、ゲラチェックの段階で著者に大腸がんが発見される。それでもナースからネタをもらい、「生命力が右肩下がりの人間に、下ネタはビタミン剤より効く」と語る。エロへの飽くなき探究心と、がん治療を乗り越えて本書を世に送り出した著者に敬意を表さずにはいられない。

週刊朝日 2013年7月12日号