書評『ブラックボックス』篠田節子著 |AERA dot. (アエラドット)

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《話題の新刊 (週刊朝日)》

ブラックボックス 篠田節子著

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西條博子#話題の新刊

ブラックボックス

篠田節子著

978-4004314110
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 地方都市で、完全無農薬のハイテク農法を推し進める企業と、食と環境の崩壊に気づき、組織に立ち向かう個人を描いた小説だ。
 都会の富裕層向けに、安心安全を売りにしたカットサラダを供給するサラダ工場。ベルトコンベアの前に外国人労働者が一列にならび、野菜を詰める作業場がある。室温は冷蔵庫並み。都会で職を失い、故郷に戻ってひっそり暮らす独身のパートタイマーの女主人公は、ここで貴重な収入を得ている。同級生には、その系列企業と契約し、土地にガラスハウスを建てた男がいる。詳細なマニュアルに従って完全空調下の養液栽培で野菜を徹底管理するのだが、設備は故障を頻発する。
 確実に利益の出る農業なら、人が戻ってくるはず──。企業側は、故郷を農の力で変えようと説くが、サラダ工場内では欠勤者が続出。奇形児の出産や、消化器系の癌の死者まで現れた。しかし時間に追われる農家の主婦らは泥つき野菜を敬遠。子供の給食にも安さと品数の多さが望まれる。待つのは重い事実だ。あくまでもフィクションだが、背筋をつたう恐ろしさがある。

週刊朝日 2013年4月12日号


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