ニート、引きこもりと聞くと、中学や高校で不登校、退学したまま自宅にいる人々を想起する。けれども、きちんと大学まで出たのに、働けなくなる人が少なからずいる。若者の社会参加、自立支援事業を10年近く続けてきた著者が、彼ら“高学歴ニート”に特有の苦しみと、支援を受けて立ち直っていく軌跡を描いている。
 実際にあった事例をもとに、6編の物語に仕立ててあるのは、世にはびこる精神論に抗してのことだ。働けない若者たちに対しては「甘え」「仕事を選んでいるだけ」と決めてかかる風潮が大勢を占め、若者たちの親もまた「私たちのせい」とうつむく。しかし著者は、一時ドロップアウトした彼らはみな「働きたいのに働けない」こと、そして「誰もがつまずく可能性がある」ことを、やわらかく訴える。引きこもる理由を探って予防策を講じるよりも、つまずいたらいつでもやり直せる仕組みを作る方が、現実的なのだ。
 社会に出て働くということの本質に裏側から迫る一冊。就活準備中、あるいは就活に悩む大学生とその親にもぜひ。

週刊朝日 2013年2月1日号