
石田:オレも一緒やわ。09年は地獄でしたね。
井上:分かりやすい言い方をすると、ずっと憧れていた「M-1」という“甲子園”で優勝して、そこからプロ野球というかプロ芸人集団に入ることになった。そこで、プロの実力に圧倒されて「甲子園優勝程度の実力では戦えないんだ」と思った。シンプルに言うと、それだけのことなんですけど、そこがとにかくつらかったですね。甲子園優勝で浮かれていた自分が恥ずかしくなったというか。
それまでは「M-1」で優勝することを目標に頑張ってきて、とにかく漫才をしっかりやること。突き詰めた言い方をすれば、相方のボケにしっかりとつっこめていたら成立していた世界だったのが、09年からはいろいろな番組にも呼んでいただくようになり、そこでは相方以外のボケにもつっこまないといけなくなりました。
さらに、そこに数多の天才ツッコミが既にいるわけです。オレがそこでつっこもうと思っても、技術も、スピードも、パワーも、全く追いつかないんですよ。例えば、何の変哲もない「なんでやねん!」にしても、オレでは初動が遅いんです。周りはもっと速い。タイミングもピッタリで絶対に外さない。
そして、実際にはそういうシンプルなワードだけではなく、そこにもう一つワードセンスを乗せてこられる。仕事に行く度に、圧倒的な差を見せつけられる。しゃべりたくてもしゃべれない。でも「M-1」優勝でお仕事はいただけるようになったので番組収録はある。でも、叩きのめされる。その繰り返しで、どんどんしんどくなっていきました。
石田:本当に地獄でした。僕は僕で自分の実力のなさを思い知りました。それに尽きます。僕が面白いことを思いついた時にはもう次の展開になっている。いつもの感覚だったらこれくらいのスピードで対応できていたという自分の感覚より、もっと速く周りは動いている。さらに、芸人さんのみならず、タレントさんとか、アイドルの方々も面白い。