自分の腕一本で生きる「ラストサムライ」たちを写した写真家・長谷川佳江 (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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自分の腕一本で生きる「ラストサムライ」たちを写した写真家・長谷川佳江

撮影:長谷川佳江

撮影:長谷川佳江

 写真家・長谷川佳江さんの作品展「鉄の華 美しき下町工場の侍」が6月3日から東京・新宿御苑前のアイデムフォトギャラリーシリウスで開催される。長谷川さんに聞いた。

【長谷川佳江さんの作品はこちら】

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 作品は神戸市の下町、長田地区に点在する鉄工所を中心に撮り続けてきたシリーズ。写っているのはこの世界を己の腕一つで生き抜いてきた職人たちの姿だ。

「やっぱり、一生懸命にやってはる方の顔には心を打たれるものがあります」と、長谷川さんは言い、彼らのことを敬意を込めて「ラストサムライ」と呼ぶ。

 話を聞くと、「サムライ」というのは決して誇張ではなく、日々、絶対に気を抜くことのできない「切った張ったの世界」であることを感じる。

「とても高い集中力が要求される仕事で、ちょっと集中力が切れると、指くらいはすぐに飛ぶ、というか。そういう世界なんです」

 以前、そんな気迫が伝わってくる作業現場を写した写真をぎっしりと並べ、神戸市内のギャラリーで個展を開いたところ、来場者からは「圧がすごい」「心臓がドキドキする」という声が多く聞かれた(さらに、「しんどい」「コワい」とも言われたそう)。
撮影:長谷川佳江

撮影:長谷川佳江

■画家を断念し、写真家に

 長谷川さんは長田区に隣接する須磨区の下町、板宿で生まれ育った。

「長田はケミカルシューズや鉄鋼製品の生産がすごく多かったんですけれど、昭和40年代、その下請けが板宿にたくさんあったんです。家族でやっている、みたいな町工場。いまはもうぜんぜん、跡形もないですけれど」

 子どものころから鉄を打つ音や、飛び散る火花、油のにおいが好きだった。

 それ間近で見たくて、一度、工場の中へ入ろうとしたことがあった。しかし、「お嬢ちゃん、危ないからあかんで」。

 絵が好きで、20代のころは働きながら芸術専門学校に通い、石膏デッサンや油絵を習った。そこで出会った人たちの影響で前衛芸術にのめり込んだ。

 しかし、結婚、出産、子育て、離婚を経験するなかで、画家になる夢は断念。社会福祉士の資格を取得し、障害者の通所施設職員やケアマネジャーの職に就いた。

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