明治大は、プロ野球では2000年の1位タイ以来の1位。サッカーでは、編集部が調査を開始した1994年以降初めての1位となった。ダブル1位は初めてのことだ。なぜ急上昇したのか。

 明治大は19年に「スポーツ推進本部」を設置。アスリートのサポートに力を入れている。副本部長の西山春文氏(副学長)はこう話す。

「プロの選手生命はそう長いわけではありません。そこで、課外活動と見なされていた体育会の活動を教育の一環として管理、サポートし、どこに行っても通用する人材を育てようと、スポーツ推進本部を設置しました。一方、20年にはサッカー部が学生の経済的支援などを目的とした一般社団法人『明大サッカーマネジメント』を、スポンサー企業の支援のもと立ち上げるなど、運動部のほうでも学生の活動支援に向けた動きが出てきました」

 優秀な人材が集まってくる理由は何なのか。

「明治のスポーツ関連施設は、他大学に比べると古く、再整備の途上にありますが、それでも全国の高校から学生が集まっている。明治にはスポーツ系学部がなく、既存の学部に所属するため、学生たちの学問的なモチベーションもひときわ高い。多角的、総合的な人間力を養えるところに魅力を感じていただけているのだと思います」

 実際に現場を率いる硬式野球部(以下、野球部)、サッカー部の監督にも聞いてみた。まずは野球部・田中武宏監督。多くのOBがプロで活躍している状況をどう見ているか。

「現役の選手たちのことは私も知っています。ただ、うちは選手をプロ野球に送り出すのが目的ではないのです。“御大”の時代からの、企業の社会人野球チームに選手を送り出そうという思いを受け継いできました」

「御大」とは、1952年から総監督時代を含め37年間にわたって指導にあたった伝説の監督・島岡吉郎氏のこと。“鉄拳制裁”も辞さない強烈な指導で、15回の六大学リーグ優勝、5回の大学日本一にチームを導いた傑物だ。

 そんな島岡氏の考えが、「学生スポーツの本分を忘れるな」。故・星野仙一氏をはじめ、プロ野球選手として活躍した明治大OBには“島岡イズム”が脈々と受け継がれている。現在の田中監督を含めたコーチ陣も、島岡氏の薫陶を受けた“門下生”だ。

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無観客試合で試される「人間力野球」