「星夜の五竜岳・鹿島槍ケ岳」。遠見尾根の西遠見山でひとり雪洞を掘り終えると、すでにあたりは暗くなり星が瞬き始めていた。やがて満点の星空になるころ、北アルプスの稜線から放射状に雲が伸びてきて、朝にはどんよりした空になってしまった■ニコンZ 6・ニッコール Z 200mm f/1.8 G・ISO1250・絞りf2.5・15秒
「星夜の五竜岳・鹿島槍ケ岳」。遠見尾根の西遠見山でひとり雪洞を掘り終えると、すでにあたりは暗くなり星が瞬き始めていた。やがて満点の星空になるころ、北アルプスの稜線から放射状に雲が伸びてきて、朝にはどんよりした空になってしまった■ニコンZ 6・ニッコール Z 200mm f/1.8 G・ISO1250・絞りf2.5・15秒

 ぼくには白旗史朗さん(※3)が撮ってきたような山岳写真とは一線を画したいという思いがすごくあります。白旗さんの山の世界は完成されたものだから、ぼくが同じ方向性で撮ったとしても、とても太刀打ちできない。ちょっと山の表情が違うだけの写真にしかならない。

 だから新しい視点がないかなといつも考えている。デジタルカメラの強み、手持ちで撮れる速写性を生かした切り口とか、高感度性能のよさとか。それよって夜の山の世界を写しとったりしています。

 でも、「これって、山の写真じゃないよね」と言われてしまうような作品にはしたくない。そんな微妙な思いがあるんです。

 いま、新型コロナウイルスでこんな状況ですが、作品を見に来てくれた人には、また山に行ってみたいな、と思っていただければうれしいですね。

 やはり日本は山国で、山というのは日本人の遺伝子の中に組み込まれている気がします。山に行きたくなるって、理屈じゃないんです。登っているときは「疲れたな」と思いますけれど、帰るころにはもう「次はどの山に登ろうかな」って、考えていますから。(文・アサヒカメラ 米倉昭仁)

※1 GOTO AKIさんは大地の営みを感じさせる作品で注目を浴びる風景写真家

※2 星野道夫さんはアラスカを舞台に活躍した動物写真家。1996年、ヒグマに襲われて亡くなった。

※3 白旗史朗さんは日本を代表する山岳写真家。昨年亡くなった。

【MEMO】菊池哲男写真展「天と地の間に 北アルプス 鹿島槍ケ岳・五竜岳」 ニコンプラザ新宿 THE GALLERY 1+2 6月30日~7月20日、ニコンプラザ大阪 THE GALLERY 7月30日~8月8日。会場では写真集『鹿島槍・五竜岳 -天と地の間に-』(山と渓谷社、A4変形判、カラ-80ページ、2800円+税)も販売する。