外房線の特急列車で運転しているE257系500番台。特急「わかしお17・21号」は勝浦駅から先は安房鴨川まで普通列車として運用されるため、「青春18きっぷ」でも利用可能となる(写真/photolibrary)
外房線の特急列車で運転しているE257系500番台。特急「わかしお17・21号」は勝浦駅から先は安房鴨川まで普通列車として運用されるため、「青春18きっぷ」でも利用可能となる(写真/photolibrary)

 特例区間以外にも、「青春18きっぷ」で乗車できる“特急”がある。といってもその正体は普通列車にほかならないのだが、運用上の都合などで特急形車両が用いられている普通列車があり、特急列車気分が味わえる“乗り得列車”になっているのだ。調査したところ、東海道本線や外房線などいくつかの路線でそうした隠れ“特急”が走っていることがわかった。

 このうち、外房線では、特急「わかしお17・21号」の勝浦~安房鴨川間が普通列車となっており、ともに夜間ながらE257系のリクライニングシートを楽しめる。市販の『時刻表』でも簡単に判別がつくので、お試し乗車がしやすい列車といえる。

 東海道本線では、熱海~沼津間に1往復ながら373系電車の普通列車が設定されている。熱海8:47発の下り1437Mと沼津7:47発の上り1428Mだ。1437Mは湘南新宿ライン2821Y(籠原5:23発、新宿6:40発)と東海道本線731M(平塚7:46発~熱海8:40着)からの乗り継ぎが可能で、岩国以西の由宇(0:00着)までの日着が可能である。

 また、浜松~豊橋間でも931Mと921M、977M、914M、920M、988Mの6本で373系が充当されており、乗り継ぎリレーで利用する機会があるかもしれない。

 このほか、常磐線のいわき~富岡間の2往復(651系)や羽越本線・白新線の村上~新潟間の上り1本(E653系)などに“隠れ特急”が存在している。

飯田線の特急「伊那路」などで使用されている373系特急形電車。飯田線や東海道本線で普通列車でも使用されている(撮影/中井大和)
飯田線の特急「伊那路」などで使用されている373系特急形電車。飯田線や東海道本線で普通列車でも使用されている(撮影/中井大和)

■「青春18きっぷ」向け!? 究極の“隠れ特急”

 そんななか、注目したいのは飯田線と日豊本線だ。飯田線は長距離普通列車の運行や天竜川にアルプスの車窓美、“秘境駅”探訪などで、「青春18きっぷ」ユーザーにも人気の路線。残念ながら長距離運用ではないものの、1505M(天竜峡8:16発~飯田8:45着)と1500M(駒ケ根6:12発~天竜峡8:11着)の1往復で、特急「ワイドビュー伊那路」用373系が充当されている。

 一方の日豊本線では、佐伯~延岡間に787系普通列車が設定されている。この区間は、大分・宮崎県境の「宗太郎越え」と呼ばれる難所を擁し、特急はほぼ1時間間隔で運行されているものの、県境を越える普通列車はわずか1.5往復にすぎない超閑散区間。ここを乗り越えるのも「青春18きっぷ」旅の醍醐味といえるが、うれしいことに(?)、その1.5往復のすべてが特急形の787系電車で運転されている。

 これは、特急「にちりん」「ひゅうが」の間合運用で、半室グリーン車を含む4両編成が充当されているからだ。グリーン車は下り2761M(佐伯6:18発~延岡7:26着)に限りグリーン車自由席として営業されるので利用可能で、グリーン券は乗車当日に車内で発売される。上り列車は非営業のため、乗車はできない。

 外房線の例はあるものの、こうした“隠れ特急”は、市販の『時刻表』では判別できないケースがほとんど。交通新聞社刊の『普通列車編成両数表』で確認するか、ネット上の情報やSNSなどを生かして情報をキャッチするのが乗車への近道といえそうだ。ただし、「旅先で見つけたらラッキー」程度で心に留めておけば、出会えたときに伝わる感激はひとしおかもしれない。(文/植村 誠)