岩根愛『KIPUKA』から
岩根愛『KIPUKA』から

 第44回(2018年度)「木村伊兵衛写真賞」(主催:朝日新聞社、朝日新聞出版/特別協賛:ニコンイメージングジャパン)の受賞者が岩根愛さんに決まりました。対象作は写真集『KIPUKA』および展示「FUKUSHIMA ONDO」です。選考の詳細は3月20日発売の「アサヒカメラ2019年4月号」で紹介します。特別別冊付録(36ページ)にて、作品を掲載するほか、本人のインタビューや今回の選考過程についてもお伝えします。

第44回(2018年度)「木村伊兵衛写真賞」
○受賞者 岩根 愛(いわね・あい)
○対象作 写真集『KIPUKA』(青幻舎)/展示「FUKUSHIMA ONDO」(Kanzan Gallery)

受賞した岩根愛さん
受賞した岩根愛さん

<受賞者プロフィール>
岩根愛(いわね・あい)/東京都生まれ。1991年単身渡米、ペトロリアハイスクールに留学。オフグリッド、自給自足の暮らしの中で学ぶ。帰国後、アシスタントを経て96年に独立。雑誌媒体、音楽関連等の仕事をしながら、世界の特殊なコミュニティーでの取材に取り組む。2006年以降、ハワイにおける日系文化に注視し、13年から福島県三春町にも拠点を構え、移民を通じたハワイと福島の関連をテーマに制作を続ける。18年、初の作品集『KIPUKA』(青幻舎)を上梓。

※第44回(2018年度)木村伊兵衛写真賞選考の詳細は、3月20日に発売される「アサヒカメラ2019年4月号」で紹介します。特別別冊付録(36ページ)にて、作品を掲載するほか、本人のインタビューや今回の選考過程についてもお伝えします。

岩根愛『KIPUKA』から
岩根愛『KIPUKA』から

■「木村伊兵衛写真賞」とは

 故・木村伊兵衛氏の業績を記念して1975年に創設され、各年にすぐれた作品を発表した新人写真家を対象としています。選考にあたっては、写真関係者の方々からアンケートによって候補者を推薦していただき、選考委員会で受賞者を決定しました。選考委員は、石内 都、鈴木理策、ホンマタカシの写真家3氏と、作家の平野啓一郎氏です。

■授賞式と受賞作品展

 授賞式は4月24日(水)午後6時半から、東京・一ツ橋の如水会館で行い、受賞者には賞状、賞牌、および賞金100万円を贈ります。また、受賞作品展を4月23日~5月2日、東京・新宿のニコンプラザ新宿 THE GALLERY 1で、6月13日~19日、ニコンプラザ大阪 THE GALLERYで開催します。

岩根愛『KIPUKA』から
岩根愛『KIPUKA』から

■「選考にあたって」(アサヒカメラ編集長 佐々木広人)

 第44回木村伊兵衛写真賞は岩根愛さんの『KIPUKA』に決定しました。
毎回、1次選考会と最終選考会の前に、推薦人に推挙していただきますが、岩根さんを推す数はその時点で最多でした。つまり、今回は「大本命」が受賞したことになります。

 こう記すと、選考があっさり終わったと勘違いされそうですが、推薦から最終選考までの過程では、現代の写真表現をめぐる課題、在りようなどがさまざまに語られました。

 いまや1秒間に25万枚の写真が撮影されていると言われています。大した知識がなくてもデジタルカメラを使うだけでそれなりの画像が撮影でき、現像知識がなくても編集用のソフトやアプリの使い方を知っていれば画像はいかようにでも加工できます。交通網と通信網の発達で、かつては秘境だった異国の地でさえ「近場」になってしまいました。もはや「ただ撮る」だけでは不十分ですが、「プラスα」があっても必ずしも評価されるとは限らないのです。

 そんな困難な時代の写真表現とは何なのか。写真家たちに課された問いは難解です。しかし、そんな時代で最高の評価を受けるということは、とてつもない偉業だとも思うのです。