「私にとって写真は立体」 写真家・長島有里枝さんが 全盲の女性との対話で生み出したもの

2019/02/06 17:00

会場設営中の長島有里枝さん(撮影/神山靖弘)※あざみ野フォト・アニュアル長島有里枝展「知らない言葉の花の名前 記憶にない風景 わたしの指には読めない本」(横浜市民ギャラリーあざみ野/会期:2019年1月26日(土)~2月24日(日)10:00-18:00、入場無料)
会場設営中の長島有里枝さん(撮影/神山靖弘)※あざみ野フォト・アニュアル長島有里枝展「知らない言葉の花の名前 記憶にない風景 わたしの指には読めない本」(横浜市民ギャラリーあざみ野/会期:2019年1月26日(土)~2月24日(日)10:00-18:00、入場無料)
 視覚に障害をもつ人が、鑑賞できる写真作品とはなにか。そもそも、写真を「見る」とはどういうことなのか――。横浜市民ギャラリーあざみ野で開かれている知覚をめぐる実験的な展覧会「長島有里枝展 知らない言葉の花の名前 記憶にない風景 わたしの指には読めない本」が話題になっている。会場設営中の長島さんに話を聞いた。

【インスタレーション作品を鑑賞する半田こづえさんと長島さんの写真】

*  *  * 
 家族やジェンダーなどを糸口に、他者との関係性やアイデンティティーをテーマに制作する写真家·長島有里枝さん。2001年に『PASTIME PARADISE』で第26回木村伊兵衛写真賞を受賞した日本を代表する写真家の一人で、文章やインスタレーションといった写真以外のさまざまな形式の作品も発表し続けている。

 今回の展覧会「長島有里枝展 知らない言葉の花の名前 記憶にない風景 わたしの指には読めない本」の出発点には、長島さんが初めて書いた短編小説集『背中の記憶』(2010年、第26回講談社エッセイ賞受賞)についての展示ができないかという、ギャラリー側からの提案があった。

「でも、あの本は10歳までの私の記憶をもとに書いた家族の物語だから、写真では表現できないんです。文章をビジュアル化して空間に展示することについて考え込んでしまいました」

 悩んでいたちょうどその頃、愛犬が急激に視力を失っていった。長島さん自身も老眼が進み、長島さんの母は白内障の手術をした。

「“見えない”ということが自分の身の回りに増えてきました。写真を撮ることはもちろん、生活のほとんどを視覚に頼って生きてきた自分にとっては重大なこと。写真を目で見て鑑賞することができない人に自分の作品を伝えるためにどうしたらいいかというと、そこには言葉があるんじゃないかという考えから、この展示になっていきました」

インスタレーション作品を鑑賞する半田こづえさん(右)と、長島さん(撮影/神山靖弘)
インスタレーション作品を鑑賞する半田こづえさん(右)と、長島さん(撮影/神山靖弘)

 写真と文章の関係性、見ること/見えないことをめぐる考察をもとに、展覧会は三つのシリーズ作品から構成されている。 

「名札付きの植物」は、2008年から2015年にかけて、ロンドンのキューガーデンをはじめとする世界の植物園で、植物とその名札を撮影したカラー作品のシリーズ。なんの植物かが一目ではわからないので写真に写る名札を読んでも、それらはラテン語の学術名なので解読できない。作品の根底には、「言葉と写真はそれぞれが補完し合うものではないのではないか」という、長島さんの長年の疑問がある。

 モノクロプリントの平面作品「本を感じる」と、立体のインスタレーションの二つのシリーズは、半田こづえさんという全盲の女性との対話から生まれた新作だ。視覚以外の方法でふだんから美術作品や本を楽しんでいる半田さんは、手で触って周囲のものを認識するため、記憶が立体でできているという。そこに、長島さんは共感した。

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「触ってこそわかることがある」

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