「門も塀も無いので、一般の方も入ってきやすい開かれた大学であり博物館なんです。他の博物館に負けないオリジナリティのある博物館に出来ないかと考え、広島大学の特色でもある自然を利用しました」

 そう話してくれたのは学芸員の佐藤大規さん。けもの道を整備して作った散策路を歩けば絶滅危惧種を含む多様な生物を見ることができます。

“キャンパスまるごと博物館”を掲げる広島大学総合博物館は季節ごとに変わる動植物を観察に県内外から人が訪れる(同大学提供)
“キャンパスまるごと博物館”を掲げる広島大学総合博物館は季節ごとに変わる動植物を観察に県内外から人が訪れる(同大学提供)

 キャンパス内で30以上の旧石器時代から近世まで全ての時代の遺跡が確認されているのが、広島大学。埋蔵文化財調査部門サテライト館ではキャンパス内で発掘された遺物を展示。そのため出土品も多く、およそ10万点を所蔵。サテライト館ではそのうちの約200点を公開しています。

 キャンパス内では住居跡や窯跡などが再現され当時の様子を知ることも。本館には魚を食べている魚の化石や恐竜の糞石など貴重な化石を見ることができるほか、ナウマンゾウの化石は実際触れることができます。

 広島大学総合博物館の良い所はフットワークの軽さと親しみやすさだという佐藤さん。それはミニ企画展でも現れています。広島大学現代折紙サークルHiMOCと協同した「創作折り紙の世界」展や、一般社団法人グローバルけん玉ネットワークと共催した「KENDAMA-けん玉の過去・現在・未来」展などユニークな企画が満載。

 これらは博物館職員と学生やOBが協力して行っています。今後は大学がある東広島市を巻き込んで“東広島まるごと博物館”を目指しているという佐藤さん。他には無いオリジナリティを追求する広島大学総合博物館の挑戦はまだまだ続きます。

【情報】「広島大学総合博物館」広島県東広島市鏡山1-1-1/開館時間:10:00~17:00/入館無料 ※休館日など詳細は公式HPでご確認ください

■最高学府が挑む「順路なし」無料館 <東京大学+日本郵便>

 東京駅の目の前に建つ商業施設KITTEの2、3階にあり、東京大学の総合研究博物館と日本郵便が協働運営するJPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」。まず館内に入って驚くのはオシャレな空間演出です。KITTEは昭和初期を代表するモダニズム建築の1つである旧東京中央郵便局を再開発した施設。博物館のスペースは元々、集配業務に利用していた場所で、長さ66メートル、幅12メートルに及ぶ巨大な空間や八角形の柱、床などから当時の面影を見ることが出来きます。またいくつかの展示ケースは東京大学で実際に使われていた物。郵便局舎と東京大学の歴史が品のある空間を作り出しています。

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