東京大学の総合研究博物館と日本郵便が協働運営するJPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」。空間演出もこだわりが詰まっている。写真は2階常設展示風景(C)インターメディアテク
東京大学の総合研究博物館と日本郵便が協働運営するJPタワー学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」。空間演出もこだわりが詰まっている。写真は2階常設展示風景(C)インターメディアテク

 秋といえば食欲に読書に芸術。お出かけしたいシーズンです。あまり知られていませんが、大学が研究や指導のためだからこそ収集・保存してきた品々を無料で公開する大学博物館は、実は最強の穴場スポット。そこでしか見られない貴重なお宝も盛りだくさん。中でも展示物や取り組みがユニークで、進化する5つの大学博物館を厳選して紹介します。

【写真】拷問具や化石、自然まで進化する大学博物館5選

*  *  *

■妖怪博士の足跡 <東洋大学>

 東洋大学の創立者、井上円了は哲学者でありながら妖怪研究に力を注いだ人物でした。そんな彼の生涯を紹介しているのが東洋大学白山キャンパス(東京都文京区)にある井上円了記念博物館です。

 常設展示では井上円了の業績を通して東洋大学が出来るまでの歴史や円了の人柄を偲ばせる遺品などが展示されています。その中でも目を引くのは「妖怪学」に関する資料の数々。東洋大学は妖怪に関連する文献や幽霊画などを所蔵しており、博物館ではその一部を見ることができます。

東洋大学の井上円了記念博物館は『妖怪玄談』など円了執筆の品々が並ぶ(同大学提供)
東洋大学の井上円了記念博物館は『妖怪玄談』など円了執筆の品々が並ぶ(同大学提供)

「明治時代になり様々なものが近代化、西洋化していく一方で、世間では古くからの迷信などが信じられていました。こうしたことが、日本の文明化の進展を妨げていると井上円了は感じていたのでしょう。だから、学者という立場できちんとこうしたものを研究して、その知識や合理的な考え方を広めていく必要あると考えたのだと思います」

 そう話してくれたのは同博物館の学芸員である北田建二さん。『妖怪玄談』を執筆し妖怪博士として知られる井上円了ですが、コックリさん研究者であることはあまり知られていません。

「最初に彼が出した妖怪学関係の単行本である『妖怪玄談』には、伊豆下田近くに滞在したアメリカ人が伝えたのがコックリさんの始まりだと書いています。当時は三本の竹棒を脚とし、その上におひつのふたを載せて作った『コックリの装置』が使われていました。この装置については、『妖怪玄談』の表紙絵になっていて当館でご覧いただくことができます」

次のページ