ミッツ・マングローブ
ミッツ・マングローブ
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 ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの連載が、「今週のお務め」とリニューアルして始まりました。5回目のテーマは「ryuchellりゅうちぇる)さん」について。

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 似非(えせ)の正義や倫理を盾に誹謗や否定ばかりし続ける人たち。皮肉や嫌みを並べて嘲笑い続ける人たち。理解が追いつかない他人の選択にひたすら嫌悪感をぶつけて自分の無知を正当化しようとし続ける人たち。日頃の鬱憤や自分の不甲斐なさを紛らわすために誰かの行く手を塞ごうとし続ける人たち。そしてそんな奴らが垂れ流した排泄物を飯の種にし続ける人たち。

 それで彼らが消えてなくなってくれるのであれば、スマホを地面に叩きつけたい気分です。

 センスと志と勇気と覚悟を持って、新しい生き方を一歩ずつ切り拓いていこうとしていた若者が、卑怯で退屈で弱虫な怠け者たちが無責任に羅列した言葉によって死んだとしたら、「絶望」以外の何物でもありません。

 何でも斜に構えて、騙し騙しで生きている無愛想な私とは違い、彼はいつも真正面から誠実に健気に謙虚に朗らかに前進することをいとわず、その存在はまさに「希望」そのものでした。

 今日まで彼が体現し、今後も前進させていっただろう世界や価値観は、私のような後ろ向きの人間すらも携えて、いつか必ず結実したはずだと思うと無念でたまりません。

 希望や自由をより見いだせる時代になった分、失望や絶望は背中合わせでついてきます。それでも自分や世の中に対して期待する「若さ」を持ち続けられる人を、私は心から尊敬します。しかし、そんな「若さ」の足を引っ張ることでしか生きている実感を得られないような人たちが腐るほどいるのも現実です。

「今度会ったらBANANARAMAの曲でいっしょに踊りましょう!」と、はにかみながら笑っていましたっけね。彼の若さ、自由、不安はこれからもずっと生きていくでしょう。