市川猿之助さん(写真:Pasya/アフロ)
市川猿之助さん(写真:Pasya/アフロ)

 18日、歌舞伎俳優の市川猿之助さんと両親が自宅で倒れているのが見つかった。母親はその場で死亡が確認され、父・段四郎さんは病院に搬送後、死亡した。猿之助さんは意識がもうろうとした状態で発見されたが、現在は命に別状はないとされる。猿之助さんは歌舞伎界のトップ役者の一人で、両親にとっては自慢の息子。しかし、事件当日発売の女性週刊誌では、スキャンダルが報じられていた。思いつめた末の悲劇なのか。しかし、なぜ両親までも……。事件を読み解くための背景を探った。

【写真】市川猿之助さんの好物の老舗の「うな重」はこちら。一家が行きつけにしていた

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 市川猿之助さん一家が行きつけにしている東京・浅草の老舗の鰻料理店「うなぎ 小柳」。

 雷門から徒歩4~5分くらいのところにある。

「うちの店はあと2年で創業100年なんですよ」

 と女将は話す。そんな店に猿之助さんはやって来た。女将によると、猿之助さんが初めて来てから、かれこれ15年か20年くらいになるという。

「猿之助さんは鰻はうちの店以外は食べられないと言ってくれるのよ。『他の店で鰻を食べたら骨がのどにひっかかった』と言ってました。食べ歩きが好きな人ですから、自分に合う店を選んでいたんじゃないかな」

 この店に通うようになったのはファンの差し入れがきっかけ。

「猿之助さんがまだ亀治郎さんだった頃、ひいきのファンがうちの店の鰻を、明治座で公演中の猿之助さんに差し入れたんですよ。それから猿之助さんがうちの店に食べに来るようになりました」

 いつも必ず注文するメニューは決まっている。鰻重の最上級の「松」(税込み3520円)と「きも吸い」(税込み110円)。記者も同じものを注文して食べてみた。ご飯の上の鰻は柔らかい。甘くもなく、辛くもなく、さっぱりとしている。

猿之助さん必ず注文していたうな重の「松」
猿之助さん必ず注文していたうな重の「松」

「猿之助さんはビールは2人で1本くらい。それほど飲まれなかったですね」

 父親の市川段四郎さんも母親も店に来たことがあるという。

「奥様はとってもかわいがっていて、息子さんを一生懸命、応援している人で、いつも息子さんの舞台を見に行っていました。うちの店には猿之助の舞台を見終わった後、和服で来ることが多かったですね。とってもかしこい方で、人を見る目がある。段四郎さんはやさしい感じの人でしたね」

 猿之助が最後に来たのは今年1月14日(土曜)。

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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梨園の「芸の肥やし」という歴史