大気汚染は、排気ガスや工場から排出される粒子状物質(PM2.5)などが原因となります。これらの物質がアトピー性皮膚炎のかゆみを引き起こすという報告は、これまで動物実験レベルでありました。今回の報告では、人間においても幹線道路沿いに住むことで、大気汚染が皮膚に与える影響が大きくなると考えられます。

 この調査結果は、アトピー性皮膚炎の予防や治療において、大気汚染への対策が重要であることを示しています。例えば、住む場所を選ぶ際には、大気汚染の少ない環境を優先することが望ましいでしょう。また、部屋の換気や空気清浄機の利用など、生活の中でできる対策も重要です。

 さらに、政策面でも大気汚染対策が求められます。自動車の排ガス規制や工場排出ガスの規制強化、公共交通の利便性向上や緑化政策など、地球環境と人々の健康を守るための取り組みが不可欠です。

 大気汚染はさまざまな健康問題に影響を与えていることから、総合的な対策が必要です。個人や地域はもちろん、世界各国が一丸となって環境問題に取り組むことが重要であると、改めて認識させられる調査内容だと思います。

文献1:J Allergy Clin Immunol Pract. 2023 Mar 21;S2213-2198(23)00305-7.

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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