今年1月、ホワイトハウスで岸田文雄首相(左)を迎えるバイデン米大統領
今年1月、ホワイトハウスで岸田文雄首相(左)を迎えるバイデン米大統領

 米誌『タイム』に岸田文雄首相が表紙として登場したが、表紙には「首相は平和主義を捨て、真の軍事力を持った国にすることを望んでいる」と記され、大きな話題になっている。政府がタイム誌に抗議し、中の記事の見出しが変わるという事態が起きたが、専門家からは「アメリカの見解を的確に表している」という指摘も出ている。

【表紙】軍事大国への"野望"がにじみ出た? 岸田首相の鋭い目つきはコチラ

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 米誌『タイム』が公開した岸田文雄首相の表紙と、そのインタビュー記事が大きな話題を集めている。

 表紙と記事は9日(米国時間)にネットで公開された。表紙には「日本の選択」という題がつけられ、「岸田首相は数十年間の平和主義を捨て、日本を真の軍事力を持った国にすることを望んでいる」という一文が添えられている。インタビュー記事のタイトルも「岸田首相はかつて平和主義だった日本を軍事大国に転換しようとしている」となっていた。

 SNSでは

<本質を、忖度なくズバリ突く、TIMEの表紙…>

<不名誉にも程がある>

 などといったコメントが投稿された。

 タイム誌の表現は政府にとって不本意だったようだ。12日に林芳正外相が記者会見で明らかにしたところによると、「表題と中身に乖離(かいり)がある」としてタイム誌に抗議したという。インタビュー記事のタイトルは「岸田首相はかつて平和主義だった日本に国際舞台でより積極的な役割を与えようとしている」に変更されている。

 また、林外相は、タイトルの印象を払拭するかのように記事の中身についてはこう総括した。

「インタビューの中で岸田総理から、我が国の置かれた厳しく複雑な安全保障環境や防衛力強化、経済政策など幅広い事項について、我が国政府の立場を説明し、かつ、結論部分では世界の分断を防ぐ歴史的な役割を負う担う指導者との論調になっておりまして、記事全体としてみれば、そうした説明が反映されたものと受けとめています」

 今回のタイム誌の騒動について専門家はどう見るか。日本は軍事大国化しているのだろうか。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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