ベンチなどでも選手がリラックスして試合に臨む姿が目立った今回の侍ジャパン
ベンチなどでも選手がリラックスして試合に臨む姿が目立った今回の侍ジャパン

 第5回のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一となった侍ジャパンの原動力はチームの一体感だった。大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)といった超一流選手が自ら壁を取り除き、風通しの良い環境を作り出したことがチームの躍進につながった。

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 まず、メジャーリーガーとして唯一宮崎でのキャンプから合流したダルビッシュがチームに“まとまり”をもたらした。

「ダルビッシュの存在は大きかった。宮崎キャンプの初日から合流、チームがまとまり最高のスタートが切れた。緊張していた宇田川優希(オリックス)など、若手にもしっかり気を配っていた。日に日に団結力が高まり、遅れて合流した大谷や吉田正尚(レッドソックス)もやりやすかったはず」(在京テレビ局スポーツ担当)

 チームを指揮した栗山英樹監督も「ダルビッシュジャパンと言ってもいい」と準々決勝(イタリア戦)の後に語るほど、36歳となった右腕の影響力は絶大だった。グラウンド内外で多くの選手と会話を交わし、緊張感を取り除いて気を使わせないように心掛けた。また練習方法やコンディショニングなどに関して聞かれた際には、知識を惜しげもなく伝授。ファンのサインにも連日快く応じるなど、選手としてあるべき振る舞いを自ら実践してみせた。

 印象的なのは2月20日に開催された“宇田川会”という名の食事会。宇田川は人見知りな性格でチームに打ち解けるのに時間がかかっていたが、食事会でメンバーとの距離が一気に縮まった。また、「あまりにも1人(宇田川)の人間が背負うには大きすぎる。だからそれは嫌だった」(ダルビッシュ)と、育成契約から侍ジャパンへと一気に駆け上がり、今までにない注目度に気疲れを見せていた24歳の心を気遣った。

「ダル、大谷の2人は、自分からどんどん周囲に話しかけてくれた。招集時には選手、スタッフともに多少は気を遣う部分もあったが、あっという間に打ち解けることができた。お互いにイジリ、イジられるような関係性も出来上がった。また投手、野手の隔てなく会話が弾むチームとなった」(侍ジャパン関係者)

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大谷の存在も非常に大きかった