3月の強化試合からチームへ合流した大谷も同じくチームに“良い雰囲気”をもたらした一人だ。二刀流として米国でも屈指のスーパースターとなった大谷はプライベートジェット機で来日。“メジャーの大物”に対して他の選手たちは気を遣う部分もあったはずだが、大谷自ら周囲へ歩み寄っていった。

「明るくて素直な男ですが、以前は少しだけ人見知りの部分もあった。やはり米国で揉まれたというか(笑)、コミュニケーションの取り方がずば抜けて上手くなっていた。仲の良い松井裕樹(楽天)に抱きついたり、近藤健介(ソフトバンク)をイジったりする姿に成長を感じました」(日本ハム関係者) 

 日本ハム時代の先輩・近藤からは「相変わらず普通の生意気なガキです」と笑いながらコメントされるなど、“かわいい後輩”である一面を見せたかと思えば、自身のインスタグラムにはチェコ戦に先発した同郷の後輩・佐々木朗希(ロッテ)との2ショットをアップし、「まあまあやるやん」と愛のある書き込みをして“面倒見の良い先輩”の顔ものぞかせた。

「ダル、大谷は野球界の宝のような選手。招集前は『何を話せば良いかわからない』と言っている人たちもいたほど。でもフタを開けると優しい兄貴という感じで全く距離を感じさせなかった。年上のスタッフにも同様で、最後の方は気を遣う人はチーム内にはいなかった」(侍ジャパン関係者)

 今回の侍ジャパンでは年齢による上下関係を感じさせるシーンはほとんどなかったように見えた。チームの勝利のため、誰もが最大限のパフォーマンスを発揮できることのみに集中できる環境がそこにはあった。全選手がプレーしやすくなるよう、お互いをリスペクトする心は持ちつつもフラットな関係性が築かれていたのだろう。

 大谷と食事をともにした宮城大弥(オリックス)が「タメ口で来い」と言われ、「翔平」と呼び「いいね」と返されたことも話題になった。

 これまで野球界は上下関係に厳しいとされていたが、今回の侍ジャパンのチームからは良い意味でそういったものがなくなりつつあるのを感じた。

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“上下関係”なしは時代の流れ?