エマニュエル・トッドさん
エマニュエル・トッドさん

 なぜ英国とオーストラリアは、米国の衛星国化がますます進行しているのでしょうか。銀行や金融、大学などのエリートにおける、インターネットによるコミュニケーションや監視が大変重要な役割を果たしているのは間違いありません。

 インターネットは、英語圏を作り出しました。その中で、米国から独立した考えを持つ英国人であること、または豪州人であることはだんだん非常に難しくなっています。なぜなら、同じ言語を使う者どうしであれば、インターネットはコミュニケーションを容易にするからです。

 あなたは日本人で、私はフランス人であるにもかかわらず、私たちは英語を使っています。しかし、私生活では自国語を使っている。しかし、あなたが英国人や豪州人であるなら、話は違うわけです。

 インターネットは、英国とオーストラリアに対して米国の力をとてつもなく増大させたと思います。

 これは、エリートのレベルの話です。インターネットを使って送金すると、非常に簡単に送金できたように感じますが、個人の情報が丸見えになる可能性があります。丸見えになっている相手というのは、誰に対してでも、というわけではありません。米国の情報機関に対して、なのです。ヨーロッパのエリートは現在、米国に対して丸裸になりうる存在なのだと思います。

 これが問題だと思っているのです。現在起こっているのは、大衆への支配ではなく、エリートへの支配です。これら二つはまったく違うものです。いわば「世界的な寡頭制システム」の中ではとくにそうなります。だから私は、グローバルエリート内での相互作用と支配に、より関心があります。その中心には、米国がいます。

■長期化するウクライナ戦局を左右するもの

――ウクライナ危機に関しては、ロシア軍とNATOまたはウクライナ軍によるサイバー戦の側面もありますが、どのように感じておられますか。

 これらは「新しい戦争技術」です。歴史のあらゆる段階で新しい戦争技術が生み出されてきました。

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ウクライナ戦争の「新しさ」とは?