小田桐市議にも学校格差の声は届く。市内の古い小学校では、プールの老朽化が進んでいるところもあったがなかなか改修されず、23年度から民間プールで授業を行うことが決まった学校もある。

「人口を増やしたという点では成功といえるのかもしれません。ただ、それもTXが開通したおかげであって、市の施策の効果と言えるかは微妙です。人口急増に対応するため、いびつに学校などのインフラを整備してきたのが実情です。全力疾走しながら考えます、という形ですよね」

 と話すのは流山に40年近く住んでいる早稲田大学文学学術院の石田光規教授(社会学)だ。石田教授は街づくりに詳しく、過去には「多摩ニュータウン」の研究を行ったこともある。多摩ニュータウンといえば、1970年代は憧れの郊外ニュータウンだったが、近年は人口減と高齢化が進み、街の活力低下が課題となっている街だ。

 石田教授は、市内に地域間の格差が生じていると指摘する。

 市を東西南北に分けると、北部だけは人口が減り高齢化が進む。市の推計では、「0歳」から「85歳以上」までを5歳ごとに分けた場合、2030年には85歳以上が人口ピラミッドでもっとも多くなっている。

 その北部にあるのが東武アーバンパークラインの「江戸川台駅」。1960年代に開発され一戸建て中心の住宅街が整備され、人口が急増した一帯だ。東急東横線の「田園調布」をモチーフに駅前から道路が放射状に整備されており、当時は今のおおたかの森と同様に、主に安定した収入がある子育て世帯が流入した。

「昔は若い人も子どもも多くて、商店街もにぎやかだったけどねえ」(地元の70代男性)。今は駅前の商店街はシャッターが目立ち、日中も街は静かだ。

 石田教授は市内のさまざまな地域の住民と対話しているが、江戸川台などTX以外の沿線住民などからは、「市はおおたかの森とそこに移り住んできた住民ばかりを見ている」との諦めにも近い愚痴をよく聞かされるという。

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駅から見えるのは森ではなくマンション