特に最近は、学生芸人、社会人芸人など、大学生や社会人でありながら舞台に立って活動するアマチュア芸人も注目されてきている。学生芸人からプロになってすぐに華々しい活躍をしているラランド、ダウ90000のような例もある。そういう即戦力の人材を見つけたいという意図もあるのではないか。

 もともと吉本興業が主催する賞レースはたくさんあったのだが、近年ではそれがさらに増えつつある。結成16年以上のベテラン漫才師を対象にした『THE SECOND~漫才トーナメント~』の開催が発表されたのも記憶に新しい。なぜ吉本興業はお笑い賞レースを次々に立ち上げているのか。

 その理由は、それがお笑い界全体を活性化させることにつながるからだろう。吉本興業は数多くの劇場と多数の芸人を擁するお笑い界のリーディングカンパニーである。芸歴制限などでさまざまな形の区切りを設けて、芸人同士をどんどん競わせることで、個々の芸人のレベルも上がっていくし、そこから新たなスターが生まれたりする。その結果、お笑い界がさらに盛り上がっていくことになる。これは吉本興業というトップ企業の使命のようなものだ。

 2001年に始まった『M-1グランプリ』が商業的に大成功を収めたことで、お笑い賞レース文化が花開いた。プロ・アマ問わず、芸歴も問わず、そこからさまざまなタイプの新星がこれからも輩出されていくだろう。(お笑い評論家・ラリー遠田)

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら