摂食障害全国支援センター:相談ほっとライン
撮影/高野楓菜(写真映像部)
摂食障害全国支援センター:相談ほっとライン 撮影/高野楓菜(写真映像部)

摂食障害(拒食症・過食症)は10~30代の女性に多く、医療機関を受診する患者は年間約22万人。しかし専門的な治療を受けられる医療機関が少ない上に、情報も乏しく、未受診の潜在的な患者や予備群はその何倍もいると考えられている。国立国際医療研究センター国府台病院(千葉県市川市)は早期治療につなげるため、2022年1月に「摂食障害全国支援センター:相談ほっとライン」を開設し、全国の患者や家族から寄せられる相談に応じてきた。開始1年間に寄せられた856件の相談内容から、どのようなことが見えてきたのか。同院心療内科診療科長の河合啓介医師に話を聞いた。

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■拒食症の相談の多くは母親から

 摂食障害は、低体重に陥る「神経性やせ症(拒食症)」と、体重は正常範囲の「神経性過食症(過食症)」に大別される。ほっとラインに寄せられる毎月70~80件の相談のうち、7割は拒食症だ。

 中学3年生の娘を持つ母親(40代)は電話口でこう訴えた。

「何日も前から娘がほとんど食べ物を口にしていません。すでにガリガリにやせているのにもっとやせたいと言って食べないし、病院に連れていこうとしても太らされるから絶対にいやだと言い張っている。どうすればいいんでしょうか」

 電話を受けたコーディネーターは、母親に、まずはじっくり娘の話を聞くことや、心配している気持ちを伝えること、受診に導くための具体的な言い方などを助言。さらに居住地から行きやすい医療機関を教え、「本人を連れていくのが難しいなら親が相談に行くこともできる」と伝えた。河合医師はこう話す。

「どう回答するかは、ケース・バイ・ケースです。拒食症は低栄養による合併症を起こしやすく、患者の約5%が死亡していて、致死率が高い。そのため命の危険がある場合は、すぐに救急搬送を依頼するようにアドバイスすることもあります」

 拒食症は極端な食事制限などで体重を落とすことに固執し、明らかにやせているのに「まだ太っている」と思い込んでさらにやせようとする。拒食症では本人よりも親からの相談が多く、やせの程度が悪化するほど親の相談割合が増える。そのほとんどが母親だ。

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これ以上やせたら死んでしまう