同じくレンタル移籍の立場であるFW前田直輝(ユトレヒト)も苦しい状況が長く続いた。東京Vの下部組織出身で高い技術を持った左利きのドリブラーで、名古屋時代の2019年にシーズン2ケタゴール(10得点※ルヴァン杯を含む)を記録するなど得点能力も高い。だが、オランダでのデビュー戦となった昨年1月16日のアヤックス戦で左下腿骨折の大怪我を負って長期離脱。その不運に見舞われた中でも昨夏にレンタル期間の1年間の延長が決まったが、故障から復帰した今季も、ここまでリーグ戦20試合中7試合(スタメン2試合)出場と出番は限られている。しかし、2月7日に行われた国内カップ戦で後半途中から出場すると、延長前半3分に待望の移籍後初ゴール。この“結果”で一気にチーム内の立場を変えられるか。現在28歳。本人は欧州でのキャリア継続を希望するだろうが、Jリーグでこの男を欲しがるクラブは古巣・名古屋を含めて多いはずだ。

 もう一人、前田とは同学年で小学生の頃から東京Vのアカデミーでしのぎを削りあった間柄でもあるMF中島翔哉(アンタルヤスポル)の去就も気になる。圧倒的なドリブルスキルで森保ジャパン発足当初のエースだった日本代表の元10番。FCポルト在籍時のコロナ禍を契機に出番を失い、UAEのアル・アイン在籍時には腓骨骨折および靱帯断裂の重傷を負うなど不遇の時を過ごし、2022年9月からトルコ1部でプレーしている。しかし、9月17日の本拠地デビュー戦で、後半途中出場からわずか15秒で一発レッド。その後、故障離脱もあって加入後のリーグ戦16試合中、出場9試合で0得点0アシストと結果を残せていない。現クラブとの契約は2024年6月まで。コンディションさえ万全ならば、依然として日本人トップクラスのアタッカーであることは間違いない。まだ28歳。Jクラブからすれば資金面をクリアする必要はあるが、外国人助っ人よりも計算できる“特効薬”になる。中島本人にとっても日本復帰は悪くない選択肢のはずだ。(文・三和直樹)